2022/11/01
近年、副業・兼業を希望する働き手は増加傾向にある。
副業・兼業をしている理由として、副業・兼業をしている者の半数以上が「副収入を得たいから」としており、金銭的な理由がもちろん目立ってはいるが、 「自分で活躍できる場を広げたいから」 「さまざまな分野の人とつながりができるから」 「現在の仕事で必要な能力を活用・向上させるため」 「好きなことができるから」 「地域活性化に貢献したいから」といったキャリア形成や自己啓発のために行う層も存在している。
足元では新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるリモートワークの普及や休業・失業に伴う余暇の増加が、企業の副業・兼業容認の流れを加速させたことも紛れもない事実である。
厚生労働省は2021年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、副業・兼業における企業と労働者の一般的な対応を示した。また「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立しており、副業・兼業に関する環境は着々と整備されている。
副業・兼業は、個人の能力開発の機会という側面もあり、また企業にとってみれば、副業・兼業をする働き手が自律的なキャリア形成の一歩を踏むこと、新たな知見をもたらしイノベーションの原動力となり得ることは本研究でも明らかとなった。企業にとって、社員自身の多様な働き方を許容することは、社員のエンゲージメントやパフォーマンスの向上につなげることができる可能性も持つ。また、多様な働き方の社員を受け入れることで、大きな変革のきっかけを得ることができる可能性も膨らむ。
労働市場の需給の調整面においては、副業・兼業の促進、多様な働き方の高まりは、構造的労働力不足が予測される日本にとって解決の糸口になる可能性もあり、また働き手の自律的キャリア形成、生産性向上という観点からもやはり期待が大きい。
ただ、本誌でも記載の通り、メリットだけに目を向け、安易に導入することは必ずしも良いというわけではない。 副業・兼業の広まりは抑えられる・止まるものではないが、本誌で見たようなさまざまな角度からの研究成果や企業事例などからも、企業側の葛藤や障壁は理解できることであり、条件的容認からスタートしていることは当然の流れである。
本書を通じて、企業・個人双方にとって、より良い副業の在り方、組織マネジメントの在り方を一歩進めるための一考になればと考えている。
人事担当者に自社での副業容認に対する賛否を聞いたところ、賛成が7割、反対が3割という結果となった。賛成の理由としては、スキルアップや本業への良い影響、収入補填などが挙がるが、「本業に支障をきたさない範囲ならば」という前提を置くコメントが目立つ。一方で、「本業を離れた時間は自由」とする声も多く見られた。
反対意見としては、本業がおろそかになることへの懸念が多い。労務管理や情報漏洩防止の難しさを訴えるコメントのほか、「業態や就業時間の面で現実的に無理」とするものもあった。なお、賛否の結果を属性別で見たところ、賛成者は副業容認企業に多かった。
上記の続きをご覧になりたい方は、「HITO REPORT vol.12(発行:株式会社パーソル総合研究所)」をご覧ください。
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