Monthly Report 2022 June
人的資源の情報開示が求められるISO30414への日本企業の対策は?

2022/06/07

2020年9月、経産省産業政策局内に「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会(座長 伊藤邦雄:一橋大学大学院経営管理研究科 特任教授)」(以下、人材版伊藤レポート)の報告書が発表されました。

日本国内においては人的資本に関する情報開示は義務付けられていませんが、今後はISO30414への対応が進んでいくと見られています。
ダイバーシティに対しての人事戦略が求められたり、SDGsの目標8の「働きがいも経済成長も」への対応も加速しています。

カネについては、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)等といった財務諸表で開示されておりましたが、ヒトについても企業成長を図る指数としてISO30414のガイドラインに沿った情報開示が求められる可能性も考えられます。

これからは、人的資源価値を最大限に引き出す方向に創造的かつ柔軟に変われる企業と、そうでない企業との間には、人材版伊藤レポートが指摘しているように、埋めがたいほどの企業力の差が生ずると言われています。

経営陣の他、人事の責任者(担当者)など組織と人的資本の関係について関心のある方は、人材版伊藤レポートを一読されてはいかがだろうか。
最後に本レポートの「はじめに」から抜粋した一文をご紹介します。

“企業価値の持続的成長を実現するため、わが国では2010年代に入ってコーポレートガバナンス改革が進められている。重要な事実は、企業価値の主要な決定因子が有形資産から無形資産に移行していることである。

無形資産の中でも人的資本は経営の根幹に位置づけられるべきものである。その意味で人的資本の価値創造は企業価値創造の中核に位置する。にもかかわらず、平時や順境にあるときは、人的資本に関わる問題を本質的に捉え、抜本的に考え直す姿勢がどうしても弱かった。
しかし、それではグローバルな企業価値競争の世界で淘汰されてしまうだろう。

コロナ禍は、「常識」を疑い、「慣性」に抗い、大きな変化のムーブメントを起こす好機でもある。これからは、人的資本の価値を最大限に引き出す方向に創造的かつ柔軟に変われる企業と、そうでない企業との間には、埋めがたいほどの企業力の差が生ずるだろう。

すでに労働市場では、採用プロセスでリモート面接が進みリモートワークができる企業とそうでない企業との間で、5 倍以上の応募者数の違いが生まれているともいわれる。
また、国内外の機関投資家の間では、ESG(環境・社会・企業統治)投資の中でもSの要因が持続的な企業価値向上には不可欠であるとの認識が広がり、今後の企業との対話の中でもより一層重視していくというムーブメントが起こりつつある。”

※出典:経済産業省(2020年9月30日 公表)
持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書

日本コンファレンスセンター協会(cbn-jp)会長 田中慎吾

1947年東京生まれ。現、日本コンファレンスセンター協会(cbn-jp)4代目会長
FMG-JPN(JV5社のコンベンション施設運営会社)やCBN-JP設立、国際コンファレンスセンター協会理事就任など30年以上に渡り日本の会議文化発展に寄与。1993年、著書「感性ビジネス ザ・コンファレンスセンター」(文真堂より・共著)